同軸ケーブルを用いたネットワーク『TLC(TV Line Communication)』

近年、ホテルをはじめ、パブリックスペースでも、有線LANと無線LAN(Wi-Fi)はなくてはならないインフラとなりました。
そして、COVID-19禍を経験する中で、インターネット経由で仕事をするリモートワークのワークスタイルも一般化しました。
このような環境の中で、様々な場所においてインターネット通信環境の安定性を求める声が強くなり、パブリックスペースの管理者がその声に答えなければならなくなっています。
その中で、既存テレビ共聴ラインを生かし、大きな工事をせずとも高速LANを利用できるシステムが新登場しました。

RFモデムの上り速度の遅さを改善したTLC(TV Line Communication)モデム

かつてビジネスホテルやシティホテルでは、PAY-TVの課金通信に利用されていた双方向機能を転用した「RFモデム」を利用したシステムが一世を風靡しました。
しかし、この従前のシステムでは、下り速度はともかく、上り速度が遅く、大容量ファイルの送信に苦慮された記憶をお持ちの方も少なくはないかと思われます。

本稿でご紹介するTLCモデムでは、同軸ケーブルを利用しながら上り下りの別なく実効速度330Mbpsを実現しました。
かつての同軸モデムでは上り下りで帯域を分け、その中で下り速度を重視した仕様としていたために、上り速度にしわ寄せが行く設計となっていました。
これをTLCモデムでは、上り下りで帯域を共有しつつもWavelet OFDMという変調技術を用いることによって、限られた中で効率の良い通信を行うことができるようになりました。
また、通信規格のG.hn規格は元来電話線を想定した規格のためノイズ耐性に優れており、その規格をベースにシールドを持つ同軸ケーブルを線路に利用することにより、安定性の高い通信環境を構築します。
もちろん子機間通信はできないよう設計されており、マネージドスイッチでいうところのポートベースVLANに近しい設定を既定としています。

TLC(TV Line Communication)モデムはどういう環境で活躍するか

TLCモデムの利用環境については、以下のような環境での活躍が期待できるでしょう。

例えば、壁内へ通線できないが、モールとコンセントボックスが露出するのも美観上NGという場所もあるかと思います。
そういった環境でもテレビ共聴ラインさえ通じていれば、TLCモデムを付加し、LAN対応した空間として利用することができるようになります。

また、弊社が技術協力を行ったライブ配信にて、「ホール既設ルータが配信に耐えられない」とのことで、隣接ビルに設置した親機より5C-FBケーブルを引き回し、無事配信にこぎつけたこともありました。
後者の場合、LANの接続点から配信ブースまでの総延長が100mを超えていたため、TLCを利用したという経緯がありました。
このように100mを超える環境でもLANを長く引き回せることから、イベント現場での仮設LANとしての利用も可能です。

分岐分配も通常のテレビ共聴用の器具で行えるため、スイッチングハブのように分岐点で電源を必要としません。
ほかにも親機・子機を一対一として、PoC機能を付加した監視カメラ対応モデルもあります。
これもまた、アナログカメラのネットワークカメラ化において、線路長が100mを越えたり、配線が難しい場所のカメラのネットワーク化に威力を発揮します。

TLC(TV Line Communication)モデムを利用する上での注意点

しかし、便利なアイテムには注意点も存在します。
ホテル様の場合、過去のPAY-TVシステムの名残で双方向ブースターをお使いの場合もあるかと思います。
こういった場合でも、TLCの信号はブースターを越えられないため、前後で分波・混合する必要があります。

また、最近ではFTTx化が進んだためにリスクは減っていますが、CATVの上り帯域と重複する周波数帯を利用しているため、対策のないままCATV利用施設に設置すると、幹線へ信号を流してしまい近隣施設に迷惑をかける可能性があります。
そのため、しっかりと流合雑音対策を行った共聴システムの設計が求められます。

弊社はTLCの登場初期より多くの施工事例を持っておりますので、自信を持ってご要望にお応えできる体制で臨んでおります。
セルテックで取扱いしているTLCモデムはこちらからご確認ください。



公開日:2023年7月28日 | 最終更新日:2023年7月28日
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