レジャーホテルの話題は、舞台裏が見えないだけに興味芯々の方も多いかも知れない。
基本的にフロントは無人、乃至は目線を遮られた窓越し。
メイクの従業員とも鉢合わせしないよう、注意を払いながら運営されている。
しかし、退室客と入室客は運が悪ければ、ロビーや廊下、階段室で鉢合わせする事は起こり得る。
この点についても、明確な動線分けをするなど、様々な配慮・気配りがされているのが現状だ。
かつて弊社にも「お客様同士が鉢合わせしないシステム」のご相談があった
少し古い話で恐縮だが、平成18年頃、あるレジャーホテルから「お客様同士が出来るだけ鉢合わせしないようなシステムを考えて欲しい」との依頼があった。勿論、コンピューター設備が整ったホテルで、矢印灯や客室表示灯などの誘導設備も整っていた。
本来であれば、管理コンピューターの拡張機能として設備されるのが筋だとは思うが、当時オプション機能にも無かったため、何とかして欲しいとの依頼だった。(※現在では高機能化された管理コンピューターで対応可能)
施設内に他の利用客や従業員との共用通路がある場合、利用客がチェックアウト時に鉢合わせしないためのホテル側の心配りのシステムである。
どのようにレジャーホテルの利用客同士が鉢合わせるのを防ぐか
利用客はチェックアウトの際、客室精算機で支払いを済ませると、概ね5分以内に退室することになる。具体的には「今部屋を出ると他の利用客や従業員と鉢合わせになる」ということを、客室精算機の近くで表示して知らせる設備が欲しいとの要望だった。
この要望に対して、管理コンピューターからはそんな都合の良い信号は出ていなかった。独自に構築するしか方法が無い。
それにしても、何をトリガーとして作動させたら良いのか悩んだ。
何をトリガーに利用客同士が鉢合わせることを検知する?
鉢合わせの発生する場所は、主に2F廊下と中央付近の1Fロビーに通じる階段室である。2F廊下に人が居るかどうかは、人感センサーを数台設置すれば解決できる。
問題はロビーから2Fへ上がる来客との鉢合わせをどうするかだ。
まだ客室へ入室していないので、チェックイン信号は使えない。
ただし、客室選択をしている状態なので、ステータス的には『誘導モード時』となる。
この時、階段を上がって正面に、左右に矢印の付いた誘導灯が作動する。客室が上がって左なら左向きの矢印灯が点滅する仕組みだ。
トリガーとしては、この矢印誘導灯から信号を取り出す他はない。
左右別々に動作するので「OR回路」でリレーを組むことにした。
リレーを作動させるだけの電流容量があれば良いので、2極リレーを4極リレーに交換して対応。
更に問題は客室内の表示灯は点灯状態にするのだが、このまま接続すると点滅してしまう。
この問題を解決するため、タイマーリレーを使い、点滅のOFF時間をキャンセルして、作動中はON出力するように設計した。
こうして特注制御盤から各客室まで配線をして、特注の「通行中表示灯」を精算機脇の壁面に埋め込み設置した。
しかし、ここでも解決しなければならない問題があった。
信号線だけでは表示灯の容量が足りない
信号線だけでは「通行中表示灯」を点灯させるだけの容量が無いため、客室側にリレーを取付け100Vの電球(当時LED電球はまだない)を点灯させることとしたため、各室で電源工事が必要となった。精算機の天井には、精算時のみ点灯するダウンライトがあった。
表示灯も同じタイミングで表示すれば良いので、通行中の人が居た場合でも、すべての客室で一斉に点灯するのでは無く、精算のために精算機付近に利用客が居た場合のみ点灯することになる。
電源はこのダウンライト電源を流用させてもらった。
勿論、退室して自分達が廊下に出た場合にも、センサーに掛かるため、鉢合わせは大きく解消される。
こうして、すべてのシステムが完成した。
この度、改装工事に際し、表示灯やセンサーリレーなど一部刷新し、またリネン室側にも表示灯を増設して、これからもこのシステムを活かして頂けることになった。
弊社では、「通行中表示システム」と呼称している。
超アナログシステムでは有るが、長い間機能し続けていることに、大変感慨深いものがある。
最近のレジャーホテルの利用客退室システム
最近のビル型ホテルでは、客室精算するとお帰りエレベーターがそのフロアーで待機モードになる。部屋を出れば、エレベーターの待ち時間も無く、鉢合わせのリスクも軽減される。
同時にバックヤードでは、そのフロアーのメイク作業の待機表示が出る。
エレベーターが降下すると作業開始ステータスに変わる。
これらはすべて管理コンピューターからの信号によって、様々なシステムが複雑に連動している。
勿論フロントでは、一連の動きを監視カメラや、客室管理システムの画面で確認も出来る。
アナログからデジタルの時代に変わろうとしている今では、こうしたシリアル信号での制御についても、またネットワーク対応の制御についても、弊社独自のノウハウを織り交ぜながら、お客様の要望に添った独自のシステム開発を自信を持って推し進めていきたいと願っている。
Sell technology(技術を売る)を冠した社名に恥じないよう、社員一同新たな挑戦に挑んでいきます。