初めての2カメ撮影エピソード

昭和の終わりから平成の初めにかけて、よく舞台のビデオ撮影をしていた。
ビデオ規格もシブサン(3/4インチ、Uマチック)規格から、1/2インチVHS規格になった頃の話である。
局やケーブルテレビ局仕様にはソニーのベーターカム方式が出始めた時期である。
主に各地の市民会館や文化センターの舞台で繰り広げられる日本舞踊やバレー、詩吟剣舞などの撮影である。

当時の舞台撮影機材・撮影環境

当初はワンカメで撮影していたが、ある日ビデオスイッチャーを持ち込み、2カメで撮影する事になった。
勿論、業務用カメラではあるが、アナログ仕様しかなかった時代のため、同期信号接続は必須である。
当時のカメラは、家庭用カメラの撮像管はサチコン管、業務用カメラはプランビコンの3管仕様が一般的になって来た時代だ。
撮像管というのは所謂真空管仕様で、その後のものは撮像素子と言う。
CCDとかCMOSになって太陽に向けても平気になったし、小型化された。
現場での撮影前準備として、カメラボディ側面のカバーを開け、コアを回しながらレジストレーション合わせをする。
コレをしないとR.G.Bそれぞれの画像が一つの画像にならない。
ホワイトバランスも、白い紙にタングステンのライト(2700k)を当てながら、設定ボタンを押す。

カメラを複数使用する場合、位相調整が必要だった

さて、2台のカメラで撮影する場合、色合いと明るさ、質感などが違うと切り替えた時、同じ撮影現場なのに違和感を感じる。
そのため2台のカメラでカラーバーを発生させ、モニターの上下で2分割する。そして分割位置が分からないように調整をする。
こうした調整をせずにいきなり舞台撮影をすると、バックの紅白の幕がワイプで切り替えると赤色が緑色になっている。
人物を映すと酷いカラーになってしまう。
これは位相調整が出来ていない状態で、カメラを複数台接続する場合は、この位相調整は必須となる。

また、2カメ撮影を始めて間がない頃、忘れられない出来事があった。
ある都市の文化センターで日本舞踊を撮影していた時の事、我々の後ろを通過した人がボソッと「マスターブラックが狂っている」と言って通り過ぎた。
当時、2カメ撮影は経験が浅く不慣れだったため、「マスターブラック?何?」といった状態で、素人丸出しの撮影をしていたのを思い出す。
勿論、その後はマスターブラックもきちっと合わせ、時には2階席にもカメラを設置し、3カメで撮影することも、人手不足の際はカメラを回しながら、左手でスイッチャーのレバー操作をする事もあった。
デジタル化が進んだ今では、アナログ特有の調整作業からは解放され、随分楽になったものだ。

リニア編集からノンリニア編集へ

勿論、編集もリニア編集で、ABロールと言ってAデッキとBデッキからCデッキヘ編集していくもので、編集点を設定すると、それぞれのデッキが数秒巻き戻り、再生モードになって編集点でCデッキに記録編集されていく。
その時「カチッ」と小さな音がする。沢山編集作業をしていると、この音が快感になっていく。
今ではノンリニア編集が当たり前で、移行期にはサーバー機並みに馬鹿でかい編集機で、編集室が有るのが一種の自慢であったが、現在はノートパソコンでも十分編集でき、若い人はスマホで動画編集する時代になった。

VHSビデオテープの爪

当時、編集機で仕上げたVHSマスターテープを「完パケ」と呼んでいた。
これを業務用再生機に入れ、10台20台のダビング機にコピーしていく。
その際使用するVHSビデオテープは、背面の爪がないタイプだ。
家庭用では、大事な番組などを録画した時は、この爪を折り、上書き防止機能になっているが、業務用は初めから爪がない。
映画などの市販のVHSビデオテープを購入した際も、爪の無いタイプを見た方もおられるだろう。
ダビング機は、爪折れであろうがお構いなしに記録してしまう。

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公開日:2021年7月12日 | 最終更新日:2021年7月12日
カテゴリー よもやま話