映像化店舗の衰退からデジタルサイネージへ

平成の初め頃、”映像化店舗”と称して商空間の吹き抜けなどに、大画面マルチビジョンの設置をよく見掛けた。
勿論当時はブラウン管で、アスペクト比4:3のカラオケ等でよく使われていたパイオニア製29インチモニターが主流だったように思う。
これを9画面、16画面、20画面とアングルに組み込み、吊り上げるという大工事だった。

ここで活躍したのが画像分割拡大装置。
映像ソースは元々アナログ標準解像度なので、今では信じられない程の荒い画質で、これを拡大表示するものだから、一つのモニターだけ見ていると、何が映し出されているのやら判別が難しい。
ただ、距離をおいて見ると、それはそれなりに見えたものだ。
当初はブラウン管を使用したものだから、モニター枠の黒い部分に文字などが遮られ、少し残念な表示になってしまっていた。

モニターの大画面化と狭額縁化

その後、パイオニアの業務用ダイレクトバックプロジェクションが発売され、40インチに大画面化され、同時にベゼルの狭額縁化が進み画面は幾分見やすくなったが、解像度が飛躍的に良くなったわけではなかった。
おまけに、奥行きは画面幅より遙かに長く、重量もそれなりにあった。

あるショップで、これを2台並べて斜めに天吊りした事が忘れられない。
天井裏に通称ぶどう棚を組み、そこから寸切りボルトを下ろし、天井を貫通させて本体を取付けた。
比較的狭い空間だったので、当時は迫力があり、インパクトがあった記憶がある。

しかし、こうしたバックプロジェクションを使用したマルチビジョンは、イベントでは大活躍したものの、商業施設ではそれほど導入事例があるとは思えなかった。

商空間ではハードだけではなく、ソフトの選択も問われる

商空間で流すコンテンツにも問題があったように思う。
弊社で提供したのは、スペースシャワー・MTVなどの音楽コンテンツ、若しくはスポーツチャンネルなどのCS放送の放映が主流だった。
空間のステータスアップには役立っても、集客や売り上げアップにさほどの貢献になっていなかった事が衰退に繋がったのかも知れない。
ソフトのランニングコストやメンテナンス、更には電気代などを考えたとき、商空間における費用対効果は絶対避けて通れないと言うことだったと思う。

マルチビジョンが徐々に減っていく中、あるテナントのために、弊社で制作したCMをショッピングモールの40台を越えるモニターに一斉にプログラム配信して頂いたことがある。
ユニクロのCMの後、弊社制作のCMが流れ、制作予算が二桁も三桁も違って、余りのクオリティのギャップに、恥ずかしく苦い思い出もある。
しかし当時、ショッピングモール管理会社が、テナントのためのCM放映などをしていた事が、現在のデジタルサイネージに繋がっていると思う。

映像化店舗からデジタルサイネージへ

現在でもショッピングモールでは、管理会社の設置した多くのモニターが各フロアーに設置されているのを見掛ける。
ただ、基本的にテナントの直接の宣伝用ではないため、各テナントではそれぞれにデジタルサイネージを設置している。
そのクオリティーも様々で、安価なモニターにDVDの映像を流しているものから、商品メーカーの制作によるハイクォリティーな映像をSTBから流している物まで様々だ。
4Kや8Kのコンテンツも増える中、映像展示のやり方も、今後どのように変化していくのか楽しみである。
デジタルサイネージのご用命をお待ちしています。



公開日:2021年10月07日 | 最終更新日:2021年10月08日
カテゴリー よもやま話