株式会社セルテックは、システムの構築とそれに伴うコンテンツの提供という、いわばハードとソフトの両面を組み合わせながら、事業を推し進めて来ました。
物販だけであればあまり考慮しなくてもよい「著作権」について、様々なソフト提供を伴うため、設立当初より著作権に対して非常にシビアな態度で臨んで来ました。
今回は、著作権やその周辺権利についてお話ししたいと思います。
1.音楽著作権と元栓処理
Q:テレビ・ラジオやゆうせん等のBGMから流れる音楽を、ホテル館内で流した場合の音楽著作権はどうなる?A:この場合は、元栓処理といって各放送事業者が一般社団法人 日本音楽著作権協会(ジャスラック)へ包括的利用許諾契約に基づいて支払っているため、各施設側で音楽著作権料を改めて支払う必要はありません。(ただし、一部に包括的利用許諾契約をしていない配給会社もある)
最近は、インターネット経由でBGMを配信する会社が複数ありますが、そうした中には元栓処理の契約をしていない配給会社もあります。
その事が特に違法になる訳ではありませんが、その場合は末端の各施設において、音楽著作権料を支払う事になります。
ここは、BGM採用時点で要確認事項と思われます。
また、ラジカセで市販のCDを商業施設などで流した場合は、当然音楽著作権料が発生します。
勿論、宴会場で楽曲を演奏しても著作権者の演奏権が発生します。
余談ですが、私たちに身近なYouTube、LINE、blog、Twitterなどでも、ジャスラックとの包括的利用許諾契約については様々です。
楽曲、歌詞などの掲載には、一定の注意を払う必要があると言えます。
2.ホテル館内放送と音楽著作権(映像コンテンツの中の音楽)
自主放送チャンネルにDVDやBS/CS放送などで映画作品を放映する場合は、業務放映が許諾された場合であっても、音楽著作権は別物とジャスラックは主張しています。ただ、現状は権利行使されていない状況との事です。
もちろん、VOD(ビデオオンデマンド)の場合であっても同じです。
元栓処理されている訳ではない以上、音楽著作権問題が再燃される日が来ないとは言えませんね。
それでは、業務用アダルトビデオの場合はどうでしょう?
アダルトビデオに音楽著作権?と思われますが、オープニング・エンディングに音楽を流している場合があります。
また、極論を言うとストーリーに関係のないバック映像にテレビが映っていて、そこに音楽が流れていた場合も主張されるとの話を聞いたことがあります。
昔ビジネスホテルなどでは、アダルトビデオ番組のみ放映しているのに、音楽著作権料を支払えと督促が来る事が続き、たまりかねたアダルトビデオ業界では、放映ホテルに対し「自社の放映作品に音楽著作権に触れる楽曲不使用」との通達を出した事もありました。
そうした事から、今では各プロダクションでは著作権フリーの楽曲を選定して録音しているのが現状です。
従って、一般映画や音楽番組の場合は納得できますが、アダルトビデオの番組にまで、音楽著作権料を支払う事は、基本的にはなくなったと聞いています。
ホテルの自主放送として、ガイドチャンネルなどを放映する場合、映像制作の過程で著作権フリーの楽曲を使用するのが一般的です。
もしも、有名楽曲をBGMなどに使用した場合は、毎月著作権料が発生することになります。
放映画面と同期させなくてもよい場合は、元栓処理された有線放送などのBGM音楽を使用すれば、別途著作権料は発生しません。
3.もっと怖い映画の放映権
放映権とは、映画著作権の周辺権利の一つです。皆さんは「著作権Gメン」なる言葉を聞いたことがあるだろうか?
平成の初め頃、シティホテルなどではPAY-TV(有料ビデオチャンネル)が盛んになった。
現在では、衛星放送やVODなどのネット経由でコンテンツが供給されていますが、それ以前の映像コンテンツは、VHSのビデオテープの業務用レンタルが主流であった。
当時レジャーホテルでは、リクエストビデオなるものが大流行りで、電話でフロントに依頼するとVTRに掛けられた映画などが客室で楽しめた。
これらは、ビデオレンタルショップで借りたものをダビングしたり、果てはマメにテレビの映画番組を録画したもので、ほぼすべて違法な物の放映であった。
後には当然問題視され、取り締まりの対象となり、派手に宣伝をしていたホテルを抜き打ちで検挙すれば、しばらくその周りのホテルでは自粛されるが、暫くするとまた徐々に再開するなど、イタチごっこの様相を呈していた。
話を戻すと一般ホテルでは、業務許諾を取った映画作品を業務用レンタル業者から、供給を受ける形を取っていた。
業務許諾の映画作品のレンタル料は、一般のレンタルショップのそれと比べると、放映権を許諾している分かなり高額であった。
しかも、基本1ヶ月間の放映許諾付きであって、期間を過ぎたビデオテープは当然返却しなければなりません。
そうした中、こっそりレンタルショップで借りてきたものを流すホテルが現れた。
そこでたまりかねた邦画五社は「著作権Gメン」を結成してホテルに派遣し、摘発に乗り出した。
実際に対象ホテルに投宿して、有料ビデオを視る。そして放映作品が正規の許諾を受けているかどうか、各映画会社に電話確認を入れ、無許可であった場合は翌朝ホテル支配人を呼び出し説明を受ける。
こうして摘発された場合、ホテルに数千万円もの賠償を求めた話が、当時業界で話題になった。
我々業者がこの様な賠償額を払える訳もなく、おのずと著作権・放映権についてシビアな対応を取ってきた。
商業施設において、CS専門チャンネル(映画・音楽・スポーツetc)などの業務放映を無断で流すと・・・
当然、著作権の侵害に当たりますが、30年位前にはいくつかの事例があり、最初は違法行為をやめるよう促すが、いったん事件となった場合は数年間遡って請求があった話などが話題になりました。
現在は、あまり耳にしませんが、著作権等の権利侵害につては、しっかり意識して掛からないと、思わぬ請求額に腰を抜かす事になりかねません。
4.上映会における放映権
放映権でしばしば問題になるのは、映画の上映会だろう。昔は、近くに映画館がある場合は、そこの興行権を侵害しないなどの配慮があったと聞く。
16mmフィルムの時代は、上映会も大変だったと思いますが、ビデオプロジェクターが流行りだすと、大画面で映画を楽しむ事は簡単になった。
そこで『こんな場合は上映会に当たるの?』的な質問が良くあった。
例として
Q:カラオケボックスのパーティールームで映画を流すと上映会に当たる?
A:2人位の狭い個室の場合は、上映会には当たりませんが、5~6人以上入れるパーティールームの場合はほぼアウトでしょう。
余りないことですが、レストランやロビーで映画を流す場合、椅子を画面の方に向けてセットした場合は、上映会とみなされる場合がある。
レストラン等で、雰囲気作りのため音を消した映画の映像だけを壁面に流した場合は、BGV(環境映像)となり、上映会にはあたらない。
BGVとしての業務許諾は、月単位で取得することが出来るなど、権利処理は複雑です。
家庭で楽しむ以外は、すべて映画会社の放映許諾が必要で、弊社でも長い期間、上映会用コンテンツの案内をホームページ上でしていた。
PTAや地域興しのNPO団体などから上映会の問い合わせが全国から入るようになり、権利処理に手間暇の掛かる割に合わない仕事だった記憶がある。
放映許諾は、収容人数、公共施設か否か、有料か無料か、上映回数などにより、また配給映画会社の違いによって料金体系が異なった。
洋画などは、作品によって『日本での上映権は終了しました』などと言われる場合もあった。
上映作品の案内に使用するポスターも、画像がある場合は配給会社から送られる指定の画像を使用することになる。
画像があるポスターの場合は掲示する場所の制約も受けるなど、正規に許諾を取ろうとすると煩わしい事が多かった。
現在は、家庭のテレビも大型化し、ビデオプロジェクターも一般普及しており、ネット配信サービスも充実して、安価に映像コンテンツを楽しむ事が出来るため、上映会のお手伝いは中止しています。