こちらも、アナログ放送時代のお話である。
あるPAYテレビメーカーからの依頼で、隣接県の海辺の観光ホテルへ調査に行くことになった。
当時弊社では、スペクトラムアナライザ(スペアナ)という計測器が大活躍しており、双方向共聴システムや自主放送の隣接チャンネル送信など、技術的に高度な知識と技術を必要としていた時に、なくてはならない比較的高価な機器だ。
PAYテレビメーカーには、研究用の高価なスペアナはあっても、現場に持ち出すフィールド対応のスペアナを持っている所は余りなく、困り果てた挙句頼み込まれた状況である。
しかも現場は、弊社から200km以上も離れている。
当時はまだブラウン管の時代で、依頼の内容は客室のテレビが綺麗なカラー放送で流れていたかと思えば、次第に画質が悪くなりやがて白黒になる。そしてまた自然に復旧するとの事で、聞けば全館のテレビが同じ様な症状を繰り返しているとの事である。
まず、客室でスペアナ測定し、レベルがみるみる下がって、テレビ画面が白黒になった事を確認した。
そこで館内共聴設備の調査に入った。驚いたことに立派な老舗のホテルにも拘わらず、ヘッドエンドが無い!
高出力のブースター(増幅器)があるのみだった。
ヘッドエンドがあればAGC(オートゲインコントロール)機能が働き、変動幅が10分の1に圧縮されるのだが、障害がもろに画面に表れている状況である。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。先ずは受信レベルが変動する原因を探らなければならない。
そこで、受信点であるアンテナを見に屋上に上がった。
アンテナは、屋上の海の見える側の塔屋壁面に取り付けられ、瀬戸内海の方に向いている。
テレビの基地局を訪ねると、海の向こうの山を指さした。
この時点で、原因をほぼ把握できた。
これは水面反射による受信障害で、直接波と水面からの反射波が干渉し合い、電波が強くなったり弱くなったりする現象で、瀬戸内海の潮の満ち引きに影響を受ける現象である。
海辺の建物で、海の向こうに基地局がある場合に、特に注意が必要と言える。
早速対策の話に入った。この受信障害を避けるためには、受信点を移動する必要がある。
提案したのは、塔屋の海とは反対側へアンテナポールを移動し、尚且つできるだけ低くアンテナ設置してアンテナの位置から海面が見えない様にするご提案をした。
後日、ホテル出入り業者によりアンテナ移転工事が行われた様で、その後不具合の連絡は頂いていない。
忘れられないのは、この一連の調査の報酬がこの日の昼食代だけであった事である。
註)写真は、別の物件です。
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